隆也のおじいちゃんの家に着いたのは、太陽が沈みかけてた時だった。空が真っ赤で、山に太陽が隠れていく、そんな感じ。
隆也のおじいちゃんの家は、田園風景が綺麗な村にあった。大きな居間にはもう晩御飯の準備がされていて、到着と同時に宴会が始まってしまった。私はろくに挨拶もしていないのに、なぜか隆也の親戚の人たちとご飯を食べて、楽しく話していた。隆也のおばあちゃんはすごく若く見えて、驚いた。


、ちょっと外出ねぇ?」

お酒によって大騒ぎしている隆也のお父さんとおじいちゃん、それとよく知らない叔父さんたちを見ていたら、隆也がそう言った。私は頷いて、部屋をこっそりと抜け出す。隆也と一緒に玄関から出て行って、そのまま田んぼ道を歩いた。

「ちょ、隆也、歩くの早い!」
「あ、わり。」

隆也は私に手を差し出し、それを私は掴む。当たり前のようにして手を繋ぐ私たちはきっと、どこからどう見ても恋人同士(そうなんだけどね)。
田んぼ道を抜けて、小さな雑木林に入る。サーと水が通る音が聞こえるから、きっと近くに小川があるんだろうな、と思っていたら、目の前に凄く綺麗な光景が広がっていた。

「うっわ…、すごい!これ、何?」
「ただのホタル。もしかして見んの初めて?」
「初めて!すごーい!綺麗!」

はしゃいでいたら、隆也に腕をひかれた。座れ、と小さく言って隆也は私の手を離す。そして、地面へ座った。私は隆也の隣に座って、宙を飛び交う光を見る。蛍光黄色と黄緑を混ぜたような色が、綺麗に浮かんでいた。言葉ではいいあわらせないくらい、幻想的で、素敵な光景。

「隆也、あのさ、ありがとうね。」
「なにが。」
「今朝の、コト。」
「あぁ、別に。俺なにもしてねぇよ。」
「隆也がいてくれなきゃ、私きっと父さんの話なんて聞かなかった。」
「…でも、よかったな。」

隆也はそう言ったきり、何も言わなかった。隆也が無言になったのが気になって、私は蛍の光から隆也へと視線を移す。すると、その瞬間、私の唇に、何か温かいものが触れた。一瞬で離れたソレに、私は驚き隆也を凝視する。

「…見んな。」

隆也はそう一言言って、立ち上がった。歩いて去って行こうとする隆也を私はちょ、ちょ、ちょっと待って!と急いで追いかける。

「ねぇ、隆也!」
「何。」
「さっきのって、キスですか。」
「だったら?」
「よ、よくわかんなかった…。」

急いで追いかけて、追いついて。そう聞いたら隆也は不機嫌そうに答えてくれた。私が最後の言葉を言った瞬間、隆也はすぐにいつもの意地悪い顔に戻って、私の顎をヒョイと持ち上げる。

「何、もう一回してほしい、ってこと?」
「んな!ち、違う!」

私がそう言うと、隆也は笑って、照れんなよ、と言った。そして、そのまま来た時みたいに手を繋いで、田んぼ道を進んでいく。
繋いだ手は、さっきよりも熱くて、ちょっと汗で湿っていた。もしかして、隆也も照れてる?そう思ったら、なんだか笑えてきて、私はえへへ、と笑う。そしたら隆也は、キモい、と呟くように言った。

どうしよう、そんな隆也の言葉なんて気にならないくらい、今、私舞い上がってる。




























触れ合った瞬間の魔法