「おはよぉ、人識。」
「おはよ、寝れたか?」


優しい人識に少しだけはにかみながら、私はベッドから起き上がってシーツを身体に巻いて立ち上がる。
台所に立っている人識は眼鏡をかけて料理の本を見ながら何かを作っていて、微笑ましい。
新婚さんみたい、と心の中で呟いて微笑むと、人識はコチラを向いて、笑うなよ、と私を睨んだ。


「違う、おかしくて笑ったんじゃないの。」
「あー、じゃあ何か。新婚みたいとか?」


人識は笑ってそう聞いて、私が頷くとカハハとまた笑った。
シーツを解いて洋服を着て、台所で人識の隣に立つ。
すると人識はサラダのドレッシングを作ってるらしく、オリーブオイルの分量に困っていた。


「ふふふー、人識ってば優しい旦那さんみたい。」
「俺ほどジェントルマンな旦那になりそうなヤツはいないだろうなァ。」
「そうだねー。」


あえてツッコむことなく同意してみる。
すると人識はカハハと笑って、オリーブオイルをドバドバと入れた。
分量を見極めるのはどうやら諦めたらしい。
よく見てみると、テーブルの上にはハムエッグとサラダが並んでいた。
トースターも動いているから、もう少ししたらトーストも出来上がるだろう。


「すごいね、人識。実は料理の才能あるんじゃない?」
「あー、それはねぇ。さっき味見したけど、やっぱお前の料理の方が絶対うまいもん。」
「本当?じゃあ私は将来いい奥さんになるね。」
「だな。俺も将来幸せだなァー。」


そう言って愉しそうに笑う人識に、私は疑問符を浮かべる。
そして、あ、と思いついて、頬が熱くなるのを感じた。


「それって、もしかしてプロポーズ?」


照れながらそう聞くと、人識は笑うだけで。
誤魔化されたかな、と少し不貞腐れていたら頬に軽くキスされた。


「ひゃぁ・・・、なんか照れるね、こういうの。」


そう言って頬を両手で抑えると、人識はかははと笑った。
いつも深いキスばかりだから、こういうキスには免疫が無いから私はとても照れてしまう。
人識は私の頭をポンと撫でて、またカハハと笑った。


「久々だなぁ、こういうの。まぁ、たまにはこーやってノンビリすんのも悪く無いなァ。」


そう言って出来たドレッシングをテーブルに運ぶ。
トースターはチンと音を立ててトーストを出した。


人識は眼鏡を外して椅子に座り、私も人識の向かい側の椅子に座った。
食卓に並ぶ朝ごはん、自分の向かい側にいる人識。




あぁ、こんな事が毎日続く未来が、いつか来たら良いな。



そんな事を考えたら、なんだか涙が出てきた。



















If you can...
(いつか一緒に幸せになれたらいいねって、思うの。)