時間よ止まれ。
「うふふふふー。」
幸せいっぱいの笑いが止まらなくて、私は小十郎様にもたれかかったまま足をばたつかせた。
後ろから私を抱きしめてる小十郎様は私の肩にあごを乗せたまま、どうされました、と笑って私に聞く。
「小十郎様、すごく温かいです。」
私はそう言って畳の上に投げ出された足をまたばたつかせる。
パタン、パタン、と踵が畳に落ちるたびに音がする。
小十郎様はのどの奥で笑って、子供のようですな、と私に言った。
「それにしても、久々ですな。こうして2人で過ごすというのも。」
「だって、小十郎様はお休みをもらっても政宗様のお側にいるんですもん。」
「それもそうだ。」
クックッと低く耳のそばで小十郎様の笑いが響いた。
小十郎様は、いつも本当にありえないくらい政宗様のお傍にいる。
まるで影のように、いつでもどこでも一緒(私が政宗様にやきもち妬いちゃうくらい)。
だけど、今日はなぜか朝からこうして私と一緒にいてくれている。
私はそんな小十郎様の頭にコテンと自分の頭をくっつけた。
「だけど、小十郎様。今日はどうしてお部屋に?政宗様のそばにいなくていいんですか?」
「…たまにはこうして殿の傍にいるのも良いものですな。」
「あ、話を逸らしてないですか?」
「いえ。」
「……絶対に逸らしてる。あー、政宗様に聞いてきちゃいますよ?」
私がそう言うと、小十郎様は私の肩から顎をどけて私を抱きなおした。
「…ならば聞きにいけないほど強く抱きしめてしまえばいいだけの話ですが。」
「反則。」
私は短くそう言って、笑った。
まぁ、いいか。
理由なんてどうでもよくて、ただ小十郎様が今私を抱きしめて傍にいてくれてるだけで幸せだから。
「んんぅー、小十郎様の腕の中、気持ちいいです。」
「寝てしまわれますか。」
「まさか。こうして小十郎様と一緒にいれる時間を睡眠に使うわけないですよ。めいいっぱい堪能します。」
「そうですか。」
また低く笑った小十郎様。
私はそんな小十郎様の胸に頬を摺り寄せる。
するとまた小十郎様が私を強く抱きなおした。
この時間が、止まってしまえばいい。
スイート・スイート
(ねぇそうしたら永遠に一緒だよ)