「Oh?!」
あーあーあー、政宗様その反応は酷くない?
仮にも乙女の顔を見てそんな悲鳴にも似た声を上げるなんて酷いよね。
あーあ、嫌われちゃうよ?
世の中の女の子さんたちに。
って、今はそんなことどうでもいい。
どうでもいいんだ。
今私の目の前にある大きな問題に比べれば!!
「ま、政宗様ぁぁぁ…………」
「Ah、か…驚かせんなよ。化け物かと思ったぜ。」
「酷い!!って、それどころじゃないんです!!政宗様!!Help me!!助けてくださいよォォ」
涙を浮かべてヒッウッとしゃくりをあげながら、私から離れていこうとしていた政宗様の足にしがみついた。
これが政宗様じゃなくて他のどこかの殿方様だったら斬りつけられてそうだね私!!って、そんな明るくいってる場合じゃないんだっての……。
「、離せ…、助けてやりたいのは山々だが…あいにく俺はまだ仕事が…」
「……いつも仕事ほっぽりだして抜け出してるくせに。」
「…いや、ほら、な?色々あるんだよ。俺にだって。」
「……」
「Do you understand?」
「私異国語ワーカリーマセーン。」
逃げられると思うなよ!!
コレでも私はしつこさならこの米沢城内1と言われているんだ!!(あまり誇れる事でもない)
政宗様は私を一度見下ろして、大きくため息をついた。
わかってる、政宗様のため息は、私から逃げる事を諦めたという意味だ。
フハハハ!!愛は必ず勝つ!!(意味不明)
「…で、なんだよ俺に助けを求めるってことは相当な事なんだろ?」
「ハイ。この素晴らしい頭脳を持ったさんをもってしても解決できない問題が…!!」
「あえて否定はないでやるよ。」
「あ、否定されないほうが寂しいっス…」
「で、その問題ってーのは?」
「あえて無視…?そう、問題って言うのはですね…!!!!!!」
カクカクシカジカこういうことなんですよ!!
と、力説すると私の説明力に感動してか政宗様は言葉を失っていた。
そしてその後すぐに笑い出す。
私はいきなり笑い出した政宗様にビクリと肩を震わせた。
「Nice!!お前、良い事言ったな!!」
「はぁ?!」
「あの小十郎にそんな事言う奴がいるなんてなぁ!!」
「ちょ…!!笑い事じゃないんですってば!!」
「んでなにか?お前が言う問題ってーのはその後小十郎が一言も喋ってくれないってか?」
「………う…」
「…ップ、ハハハハッ、あんた最高だ!!」
腹を抱えて笑い出す政宗様に、私は愕然とした。
ダメだ、この人面白がってるだけで全然助けてくれる気配無い!!
お前それでもこの国の主か?!筆頭か?!(声に出していえないので心の中で!!)
にらんでみるものの、政宗様は笑ったままだ。
そんなに笑える事か?!私はその事をめちゃくちゃ後悔しているというのに……。
そう、今回いつでも仲が良かった私と小十郎さん(そう、仲が良かったのよ!!ていうかもはや恋仲まで秒読みだったのよ、たぶん!!)の間に何があったかというと。
それは、半刻ほど前にさかのぼるのです。
「小十郎さんって、すごいですよね!!」
「そうですか?」
私は小十郎さんを見て素直にそう思って言った。
色々な人に頼られて、あの政宗様を影から支えて、そしてなによりその人柄が、すごいと思った。
本当、素直にそう思っただけで。
「すごいですよ!!なんかもう、人生の尊敬できる人物!!って感じです!!」
「そんな……照れますな。」
「そう、なんかこう……おじいちゃんみたいな感じで!!!!」
ピシリ、と空気が凍った気がした。
さっきまで照れくさそうに苦笑していた小十郎さんの顔が、固まっていた。
あぁ、頬の傷が今日も素敵!!とか現実逃避をしている暇がないほど、一瞬にして固まってしまった。
そして、沈黙。
「え、こ、小十郎さん?」
「それはつまり、殿にとって私は祖父であると?」
「はぇ?」
「……失礼いたします。」
小十郎さんは怖い顔でそう言って去っていった。
そしてそれから廊下などで会っても、いつもなら笑って話し掛けてくれたのに…、なんで無視するんですか!!小十郎さん!!
いったい何したの?!私何をした?!そしてどうしたらいいの!!!!
「Ah…よく笑った。腹痛ェ…」
「笑ってないでなんとかしてくださいよ!!私泣きそうなんです!!てか泣きますよ?!泣いてもいいんですか?!いいんですね?!うわぁぁーん!!」
「What?!な、泣くんじゃねぇ!!」
「だってぇ…政宗様が…うっ……」
「考えてやる!!考えてやるから泣くな!!(お前泣かせると俺が小十郎にネチネチ言われるんだよ!!)」
顔を両手で抑えて泣いてたら政宗様が私の肩をつかんでそう言ってきた。
私はズビリと鼻水をすすって政宗様を見た。
そして政宗様をジィィィッと見つめ続けてたら政宗様はまた笑う。
…失礼な人!!
「な、なんで笑うんですかァ?!」
「いや、泣くとますます不細工だから小十郎の前では泣くんじゃねぇぞ?」
「んまっ!!失礼ですね!!…でも、ご忠告どうも。」
そう言ってまたズビッと鼻水をすすったら、政宗様は笑って私の涙を着物の袖でグイグイと拭いた。
そうして、笑え、なんて偉そうに言うもんだから思わず笑う。
そしたら政宗様はGood!!と笑って私の頭をなでてくれた。
「政宗様、意外と優しいですね。」
「意外と、は余計だ。」
「えへへ、だって本当の事じゃないですか。」
「いい度胸だな。…、」
「………へ?」
抱きしめられて、思わず声を上げた。
そして少しだけ固まった後、あたふたと慌てる。
政宗様の背中をバシバシと叩いて、離してください!と講義した。
すると、少し黙ってろ、と言われた…、なんで…?
「オイ小十郎、出て来いよ。じゃねぇとを貰うぜ?」
「…へ?小十郎さん?いるんですか?」
「、お前黙ってろ。」
「あ、ハイ。」
「小十郎、いいのか?…」
「?」
政宗様に名前を呼ばれて上を見た瞬間、目の前に政宗様の顔があって…さらに硬直。し・か・も!!にっこり笑って!!
「安心しろ、接吻はしねぇ。でも、小十郎からはしてるように見れるだろうな。」
「……?!」
政宗様はニィっと笑う。
次の瞬間、私の目の前から政宗様の顔が消えた。
ていうか私が政宗様の前から消えた?なんで?!とか思って回りを見渡したらなんとなーく状況を把握できた。
私は誰かの腕の中におさまっていて、ていうか抱きかかえられていた。
おそるおそる顔を見てみたら、なんとそれは小十郎さんで。。。って……
「こ、小十郎さん?!」
「たとえ政宗様とて、殿にそのような事をするのはご遠慮願いたい!!」
「Oh、熱いねぇ。」
小十郎さんはすッごく怒ってて、その顔が少し怖くて。
政宗様はといえば小十郎さんをみて笑っていた。
私はただただ驚いて小十郎さんを見ることしか出来なかった。
すると、そんな私に気づいてか小十郎さんは、失礼した、と一言だけ言って私を降ろした。
「すまない。殿…邪魔をしてしまったか。」
「えっ?えぇ?!邪魔だなんて…とんでもない!!ていうか助けてもらって嬉しいくらいですよ!!」
「あー、まぁなんだ。邪魔者は俺ってコトだろ?んじゃ、後は頑張れよ、。」
あ、政宗様が去っていく。
ていうかまだいたんだ、小十郎さんのことで必死で忘れてたよ(存在を)。
私は去っていく政宗様に手を振って、それから小十郎さんのことを見た。
そうだよ、政宗様がお膳立てはしてくれた。
あとは私が頑張って、小十郎さんに謝って、もう一回仲良くならなきゃ!!
「あ、あの!!」
「何か?」
「なんで、去ろうとしてるんですか?お話、しましょう?ていうか避けてますよね、私のこと。」
「そのように一気に三つも質問をされても困ります。」
「…はぅ。」
小十郎さん、やっぱり冷たい。
どうしよう、泣きそう。
ダメだ、泣くな!!
堪えろ、ここで堪えて頑張れば、あかるい未来が待っているぞ!!
とりあえず前みたいに喋れるように!!
「あの、小十郎さんに謝りたいことがあるんです!!だから、それだけでもいいから、お話する時間をください。」
そう静かに言って、去ろうとする小十郎さんの着物の袖を引っ張った。
すると、小十郎さんは困った顔をした。
その顔は、悲しい。
だって、いつもは困りながらも笑ってくれるから。
わかってる、きっと私は小十郎さんが笑ってくれないくらいひどいことをしたんだね(なにをしたかはわからないけど!!)(え?)
「では、そちらの部屋で話しましょう。」
小十郎さんはそう言って、私を見ることもなく部屋に入っていった。
私は静かにその後に続く。
そして、気づいた。
あ、この部屋、最後に小十郎さんと話した部屋。
うん、半刻前にいた部屋だ。
「ごめんなさい!!」
最初にそう一言言った。すると、小十郎さんは驚いた顔をしていて。
「私、本当馬鹿で…ッ、実のところ小十郎さんになにをしたかとか、わからないんです!!
でも、小十郎さん、怒ってるから…、なにかした、ってことだけはわかって…、アァッ、なんていえばいいんだろう。本当、反省してるんです!!」
「…いえ、別に殿が何かをしたわけではないですから。」
「だ…、だけど!!」
「ただ、私が勝手に…。それで殿が気を悪くしていたのなら…申し訳ない。」
「そ、そんな!!謝らないでください!!」
ふぉぉぉ!!小十郎さんに謝られちゃったよ!!
ていうか謝られる事でもないのに。
でも、勝手にって言ってもやっぱり私の行動が小十郎さんに嫌な思いをさせちゃったんだよね。
やっぱ、それは良くないよね。原因を突き止めて、本当に謝らなきゃダメだ。
頑張れ!!あかるい未来のためだ!!
「あ・・・あの!!なんでその…怒ってたか教えてもらえませんでしょうか!!」
「それは…」
「お願いです!!」
私は一生懸命小十郎さんを見つめる(だって本当に必死だよ!)
すると小十郎さんは私から目をそらして溜息をついた。
えええ呆れられてる?!うそ、呆れちゃってますか小十郎さん!
必死で小十郎さんを見ていれば、小十郎さんはもう一度溜息をついた後私を見てくれた。
「…殿に祖父としか思ってもらえぬ自分に腹が立ったのです。」
「…え?」
小十郎さん何言ってるの?とその顔を凝視すれば小十郎さんは困ったように笑う。
そして、ほっぺに手を添えられる。
「殿。私はあなたを女性として見ているのです。」
「…じょ…女性?!」
「はい、しかしながら殿は私を祖父などと思っていると。」
「…ご、誤解ですよ!」
確かにおじいちゃんみたいとは言ったけど、そんな、えええ!
待って、私の片恋なんかじゃなくてお互いに?!
うそ、うそうそうそ!すっごく嬉しい!
「私、確かにおじいちゃんみたいって言ったけど、でも…ちゃんと小十郎さんを男性として見てます!」
「……そうでしたか。」
「おじいちゃんっていうのは、一緒にいると落ち着くっていう意味だし…。」
私はそう言って、必死で小十郎さんを見つめる。
すると小十郎さんはそんな私の顔を見て笑った。
おまけ
「そこまで必死になられると、嬉しいですな。」
「えええ?!」
「焦る殿は、とても可愛らしい。」
「!!!」
おわれ。
フラミンゴラヴァース
(一本足でフラフラと)