のすねた横顔が好きだ。はすねると唇を尖らせて、俺から顔をそらす。その顔が見たくていつもわざと意地悪なことをしてるって言ったら、たぶんは怒るだろう(うわ、すっげぇ簡単に想像できる)。
「もうやだ!御幸先輩の馬鹿!」
ほら、またそうやって唇を尖らせて俺から顔をそらす。俺は現在進行形ですねているをニヤニヤ笑いながら見た。が俺の部屋に遊びに来て30分、の相手をせずに野球雑誌を見ていただけですねてしまった。構ってほしいなら言えばいいのに、我慢できなくなるまで静かに俺を見て待ってるなんて、なんて、可愛い奴。
「すねんなって、。」
笑いながらからかうように言えば、はツーンとすまして、御幸先輩なんてもう知らない、もう御幸先輩なんかとしゃべんない、と言う。そんなこと、できないくせに。のその可愛い反抗的な態度が俺を喜ばせてるなんてきっとは知らない。俺はさっきよりもさらにニヤニヤする口元を隠すように、から顔をそらした。
「まぁ、別にいいけど。」
小さくそう言って、また野球雑誌に視線を戻す“フリ”をする。そのまま黙って野球雑誌に目を向けていれば、カサリ、と衣擦れの音が聞こえてきた。にはバレないようにこっそりと横目に見れば、がすごく不安げな顔で俺を見つめていた。捨て猫みたいな、そんな感じ。やばい、すっげぇ、その顔は、好い。あぁ、俺って変態かも、って正直思う。
「…御幸、先輩。」
小さく、本当に小さくが俺を呼んだ。声震わせて、本当、可愛い奴。本当はここで「何?」とやさしく聞いてやってもいいんだけど、俺はそうはしない(こんなんだから、周りに性格悪いとか言われんだろうな)。聞こえないフリをして、そのままペラリと雑誌をめくった。
「…、先輩、御幸先輩、御幸先輩、御幸先輩。」
何度も俺を呼ぶ、泣きそうな声。俺の服の袖を引っ張って、何度も何度も俺の名を呼ぶ。
「俺なんかとは、しゃべんないんじゃねぇの?」
「…ごめんなさい、嘘、だから…怒らないで、御幸先輩。」
やばい、いじめすぎたかもしんない(と言っても構わなかっただけなんだけど)。ちゃんとの顔を見てみれば、その瞳いっぱいに涙をためていて、今にも泣きそうだと言うことがわかった。俺は少し慌てて、の頭を撫でてやる。その手に安心したのか、は目を細めて俺の手をつかんでそのまま頬ずりしてきた。やばい、可愛すぎる。抱きしめたい。俺は衝動を抑えながらも、のまぶたにキスを落とした。
「、構ってほしかった?」
「…ん。」
「よし、じゃあ、構ってやるよ。」
そう言って床に押し倒せば、は目を丸くして俺を見つめる。それからしばらくして、状況を理解したのか、顔を真っ赤にして、待って!と必死で抵抗してくる。頬を真っ赤にして、目は潤んだまま。その顔は、今日見た中で一番、俺を喜ばせるものだった。