「大好き」は、何度言えば伝わるかな。












縁側からボォッと外を眺め、私は息を吐いた。

さっきから私の視界の中で動いているものと言えば、
風に吹かれてる木々の葉だとか、流れる雲。

まったく、平穏な昼下がり。


「幸村、起きてる?」

フ、と口からこぼれた言葉に、私の膝の上の幸村は瞳を開けた。

「起きてるでござるよ。」

笑ってそう言った幸村は、また瞳を閉じた。
世間一般で『膝枕』と呼ばれる行為を、私は幸村にしている。
その理由は至極簡単。

腿の上にだけれど、幸村のぬくもりをずっと感じられる。
(そりゃあ腿がしびれたりもするけど…)
それに、幸村の顔も見ていられる。

太陽の光を浴びて気持ちよさそうに眠る幸村の顔。
それは、とても幸せそうで。
見てるこっちまでも幸せになれるのだ。

「何を笑ってるんでござるか?」

「んー?幸せだなって、思って。」

幸村を見て笑っていたら、幸村にそう問われて。
私は笑顔のまま答えて、幸村の頭を撫でた。

一瞬照れたように幸村の頬は赤く染まる。
私はそんな幸村を見て、また笑った。

「私はきっと、天下一の幸せ者だね。」

「そうでござるか?」

「うん、幸村とこうやって過ごせるんだもん。」

幸せ者だよ、と付け足して言うと、幸村は目を開けた。
そして、頭を撫でる私の手をパシリと取った。

「某も、幸せでござる。」

「そうなの?」

幸村の言葉に、私は笑顔で聞いた。
答えはわかってるけれど、幸村からその言葉を言って欲しくて。
私は、幸村の回答を期待した。

「そうでござる。」

幸村はそう言って、照れくさそうに笑った。
たぶん、幸村が言おうとしている事を私が予測している事なんて知らないのだろう。


「殿とこうして過ごせる事、幸せでござる。」

照れくさそうに言った幸村。
予測どおりの言葉だったけれど。
嬉しくて、嬉しくて、本当に、嬉しくて。

思わず体を傾け、幸村に口付けた。
幸村は、真っ赤になって私を見る。
けれど、その真っ赤な顔を見て私が笑ったら、その両腕を顔に当てた。

「あ、照れてるー。」

「照れてなどいないでござる!!」

必死でそう言う幸村に、そうですかー、と笑いながら答えると返事は返ってこなかった。



「…ねぇ、幸村。」

「…なんでござるか?」

幸村に言葉をかければ、か細い声が返ってきて。
きっと、ありえないくらい照れてるんだろうな、と思いながらささやいた。


「大好き。」









世界一の幸せ者
(幸せで埋もれちゃうくらい)