準太と別れたのは、2年前。
理由は、なんとなく。
メールで告げた、別れの言葉。
最低だとはわかっていた。
それは、準太にとって、ひどく残酷な仕打ちだったと思う。
直接言う勇気がない私は、そんな残酷な仕打ちをしてしまったのだ。
そのせいで準太が私に対しての想いをひきずることになる、ということもわかっていたのに。
いや、そうしてほしかったのかもしれない。
いつまでも、私を好きでいてほしかったのかもしれない。
別れてもずっと好きでいてくれることを、望んでいたのかもしれない。
けれど、突然、私は思い知る。
「準太、新しい彼女出来たんだってね。ラブラブだってさー。」
クラスメイトが、ふと思い出したようにそう言った。
私はその時、ひどく滑稽な顔をしていたと思う。
トンカチで頭を殴られたような、鈍い衝撃が私を襲った。
当たり前だ、準太だって、新しい恋ぐらいする。
その事実は、ひどく当然なことなのに、私はなぜか準太に裏切られたような気持ちになった。
複雑な、心境。
「どうしたの?」
クラスメイトは不思議そうに私を見た。
私は苦笑いをして、ごめん、トイレ、と席を立つ。
しかしトイレには向かわず、廊下の奥にある空き教室に逃げ込んだ。
内側から鍵を閉めて、その場に座り込む。
うまく、息が出来ない。
わかってる、準太だって、ふっきってるんだ、私のこと。
ちゃんと、ちゃんと、私のことなんか、忘れて。
「…う……うぅっ…」
ひざを抱え込み、ひざがしらにおでこをすり当てた。
なんで、涙が出てくるんだろう。
どこかで、気づいてた。
いまだに準太のことが気になるのは、ただ、準太が元彼だったからじゃなくて。
本当は、準太が好きだったから。
好きだったのに、好きじゃない、って気持ちを隠して。
付き合ってく内に私の嫌な部分を知られて嫌われてしまうんじゃないかって怖くて、それで、別れたんだ。
準太の心に私が残るような、私への気持ちが残るような別れ方をして。
友達から「準太がアンタのこと、まだ気にしてるみたいだよ」って言われたときも。
えー、しつこいなぁ、と迷惑そうな顔をしても、気持ちのどこかでまだ準太は私のことを好きでいてくれているとホッとしていて。
「さ…っ、いて…ぃ、だ……ッ」
自分がどれだけ嫌な女か思い知った。
ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい。
私、自分だけのために、準太を傷つけて。
今もまた、自分のために、準太の新しい幸せを厭だと思ってる。
「…ごめっ、じゅ…んた…、ごめ…んっ」
誰もいない教室で、呪文のようにただ唱える、準太への懺悔。
私はやっと今、大切なものを自分から手放したことを知った。
R a m m a r i c o
(神様、お願い、私にもう一度やり直すチャンスをください。)