隣に眠る田島はひどく子供っぽくて、私はその寝顔にとても安堵した。
正直、昨晩私を組み敷いた田島はいつもの子供のような田島ではないように思えてひどく怖かったのだ。
けれどここで、私の隣で寝息をたてて眠っている田島はやっぱりいつもの田島で。
こんな寝顔ひとつで安心できる、なんて。
「田島、起きなよ。」
なんだかその事実を認めたくなくて、私は田島の体を揺らした。
田島は寝起きに強いらしい。
すぐに目を覚まし、おはよう、と私に笑って言った。
私がおはよう、と返すと田島は笑って私の体をその腕の中に引き寄せた。
小さいとは言っても田島は男。
筋肉のついたその体は、たくましいようにも思える。
「なぁに、起きていきなり。」
「別にー。ただ幸せだなって思ったから!」
「幸せだから私を抱きしめてんの?意味わからないよ。」
あぁ、かわいいことを言えない。
ここで私も幸せだよ?とか小首を傾げて言えたらどんなに良いことか。
まぁ、そんなことを出来るわけもなく。
私は少し赤い顔を隠すように田島を見ることなく呟く。
すると田島は、だよなー!俺もよくわかんねーし!と笑った。
田島の声に私も笑って田島の顔を見上げた。
「わかんないって、だめじゃん。」
「んー…理由わかんなくても抱きしめたかったからって、だめ?」
「…」
照れた。
わけもなくて、それでも私を抱きしめたかったなんて。
そんな、うれしいこと言われるなんて思ってもいなかったから。
私は答える代わりに田島にぎゅっと抱きついた。
田島は私から腕をまわすなんて思っても見なかったらしく、ひどく驚いたみたい。
私は自分の背中にあった田島の腕の力が弱くなったのを感じてそう思った。
クスクスと笑えば、また田島の腕の力が強くなる。
「やっべー!またシてー!!!!」
「…昨日何回もシた。」
「今日は今日だから、気にしないってコトで!」
「やだ!朝からとか…もっとムードなんか考えたりしてよ」
私はそう言って田島の腕の中から逃れようとするが、田島の力が強い。
結局逃れることは叶わずあきらめた。
絶倫め…とぼやくと、田島は意味がわからなかったらしい。
ゼツリンって?と聞き返され私は言葉を詰まらせた。
私が答えないでいると、田島が口付けてきて。
降りてくる口接けを、私は拒まなかった。
田島の唇が熱くて、不覚にもドキリとする。
舌先で唇をつつかれ唇を少し開ける。
すぐに舌を絡めとられた。
口接けは、深い。
開放されたときにはすでに息があがっていた。
田島を見上げると、そこにはものすごい笑みがある。
「って、キスすると何も出来なくなるよなー。」
笑っていった言葉はまるで、策士。
田島のキスは私を無効化する。
田島は嬉しそうに私のパジャマに手をかけはじめ、私は小さく溜息をついた。
別に、こういう行為が嫌いなわけじゃない。
どちらかといえば、好きだし。
けれど、田島との行為は、あまりにもムードとかそういうものがなくて。
本当に恋人同士の情事か、と疑問に思ってしまうのだ。
「…ねぇ、田島。」
「何?」
「私との行為に愛はある?」
何気なくそう聞けば、田島はまじめな顔で私を見つめた。
その真剣な瞳に捕らえられて、私は何も言えなくなる。
すると、田島は触れるだけの口接けをしてくれた。
「無いわけないじゃん!好きだから、シてんだし。」
予想外なまじめな答えで、私は目を丸くした。
そっか、好きだから、か。
なんだか嬉しくなって、私は田島を見つめた。
もう抗わない。
むしろ、私もシたくなった。
私って簡単な女、と自分を笑いながら、私は田島の背に爪を立てた。
All yOu NeEd is LovE!
(あなたが愛して呉れるなら)