Glorious Days
(黒髪・たれ目・同じ苗字。むかつく野郎。)






「…最悪」

私は机に突っ伏したままそう一言呟いて、溜息をついた。
すると、隣にいた『阿部隆也』は私のほうを見る。


「目ェ死んでるぞ。」
「誰のせいだと思ってんのよ、誰の。」

私は阿部隆也をにらんでそう言った。
阿部隆也、入学式で最悪な出会いを果たした私と阿部隆也は奇しくも同じクラスだった。

それだけなら、まだいい。
黒板に張ってあった座席表に書かれた私の座席。
「阿部隆也」という文字を私の隣にを見た瞬間、眩暈がした。
まさか、この『阿部隆也』って、入学式の、あの阿部?!

…まさかね、と自分自身に言い聞かせながら、座席に着いた瞬間。
あぁ、私はのろわれているのか、って思った。
なんせ、私の隣の席に座っていた『阿部隆也』があの阿部だったからね!


「あーぁ、こんなヤツの隣になるなんて、ツイてないわぁ。」
「それ俺の台詞だから。」
「ムカツク!」

私はそう言って、プイと阿部隆也から視線をそらした。
別に、何がとはわからないけど。
阿部隆也は、私にとって苦手な人間だった。

まぁ、第一印象が最悪だからだろうけど。





「えー、室長やりたい人いますか?」


ウツラウツラと眠りかけてるとき、フ、と担任のそんな言葉が聞こえてきて私は目を覚ました。
室長とか、そんなのやりたい人とかいるわけないじゃん、と私は担任を笑いながらあたりを見渡す。

すると。

「ハイ。」


阿部隆也が手を上げた。
私は、まだぼんやりとしていた視界がはっきりとするほど驚いて、阿部隆也を見る。
阿部隆也…あんた、そんなメンドクサイ仕事を率先してやりたがるようなヤツだったとは…。
見直したよ…阿部隆也。

「阿部さんが適役だと思うんですけど。」
「…見直したよ、阿部隆也…って、ハ?!」


私は阿部隆也を見直してウンウンと頷いていた。
けれど、阿部隆也の予想外な発言に、声をあげる。
阿部隆也の発言に、担任は、そうねぇ!と嬉しそうに言った。
ちょ、ちょっとタンマ!

「先生…ッ、私別にやりたくなんて…!」
「よろしくね、阿部さん。」
「せ…先生?!」
「よろしくね。」
「……ハイ。」

ううう、頼まれたら断れない良い人な私!
結局強く言ってくる先生に断りきれず、頷いてしまった。
私は、思い切り阿部隆也を睨んで、最低!と口パクで伝える。
すると、阿部隆也は、寝てるお前が悪い、と小声で返してきた。
なに!ムカツク!


「じゃあ、副室長は阿部さんに選んでもらおうかしら。」
「本当ですか?!」


そんな時に担任から嬉しい言葉が聞こえてきた。
私はニンマリと笑って阿部隆也を見る。
フフフ…道連れよ!
私は阿部隆也をズビシと指差し、担任に笑顔で言った。


「阿部隆也君が、適任かと。」
「ハ?!」


阿部隆也は至極驚いたような顔で私を見て声をあげた。
私は、ニコリと笑って、断ったら殺す、と目で伝える。
阿部隆也は諦めたかのように溜息をついた後、わかった、と小声で言う。
結構潔いんだね、阿部隆也、と笑って言うと、お前とは違うからな、と返ってきた。
なんだお前!ムカツク!
私は震える拳を隠しながら、一応よろしく!と笑って言う。
すると阿部隆也は、よろしくされたくもねぇけど、と言った。





阿部隆也…やっぱむかつく!


















阿部隆也
(あー、もう、ムカつく!)