Glorious Days
(黒髪・たれ目・同じ苗字。むかつく野郎。)
とてつもなく、眠たい。
あぁ、そう言えば昨日も私ってば部屋の整理をしてたんだっけな。
引越ししてきてから半月がたってるっていうのにまだダンボールが山積みな私の部屋。
1人暮らしだと、何時まで起きてても何も言われないからついつい夜更かしちゃう。
私は溜息をついて、机に突っ伏そうと…した。
「痛ッ」
隣から後頭部を殴打されて、それは叶わなかったけど。
私は自分の隣の席、阿部隆也をにらみつける。
「ちょ、阿部隆也!またアンタ私の安眠の邪魔する気?!」
「となりで大口開けて寝られたら迷惑だし。」
シラッと答える阿部隆也。
うっわ、やっぱり腹立つなァ!!
私は阿部隆也を睨んだまま、あぁ眠い!と大きな声で言った。
すると、私の前から殺気を感じる。
「…ヒィ!」
「あーべぇ…まぁたお前寝ようとしてたのか!」
「す、すみません先生!私は決して寝ようとしてたわけじゃあ…」
「嘘つくな!」
私の目の前に立っていた先生は、すごく怖い笑顔だった。
言い訳をしようにも、する余地さえない。
先生は笑顔のまま教科書をパタンと閉じた。
「お前に特別に課題をあげよう。」
「い、いりません!」
「拒否権があると思うか!」
「あります!人間誰でも拒否権ぐらい…!」
「馬鹿者!あるわけないだろう!拒否権がある人間はやることをやってる人間だけだ!」
先生はそう言ってプンプンと怒りながら黒板の前に立つ。
その瞬間、チャイムがなった。
先生は教室から去っていく瞬間、阿部、終礼終わったら職員室に来い。と言葉を残していった。
「…阿部隆也ぁぁぁー!」
「なんだよ。」
「あんたのせいで!私居残り決定じゃん!」
「知るかよ、俺のせいにすんなっての。」
「どう考えてもアンタのせいじゃぼけぇぇぇぇー!」
私はそう言って、阿部隆也をにらみつける。
阿部隆也はムカつく笑みで、私を見てきた。
ムカつく顔!と叫んで、私はプイと顔をそむける。
すると阿部隆也から、ま、頑張れば?と声が聞こえてきた。
「…頑張るに決まってんでしょ?!」
「あー、ハイハイ。」
「ムキー!むかつく!」
「へー」
その反応がいちいちムカつくんじゃぼけぇ!と机を蹴飛ばす。
教室にちょうど入ってきた担任の悲鳴が聞こえたけど、あまり気にしなかった。
「だぁぁぁー終わらない!」
私はそう言って、ガシガシと髪をかく。
先生の馬鹿!これどう考えてもまだ習ってない範囲じゃん!と叫んでみてもダメ。
先生はこの場に居ない。てゆか、帰りやがった…!
「嫌ッ、まじ無理!」
私はそう言って、課題プリントを1枚机の上から投げ飛ばす。
すると、課題プリントはヒラヒラと宙を舞って、思った以上になんだか愉快で。
「あ、これ、おもしろーい!」
私はケラケラと笑って、舞い落ちていった課題プリントを眺める。
あ、と思いついたときにはもう、課題プリントを全部手にしていた。
「チュドーン!」
自分でも良く分からない言葉を発し、私は課題プリントを投げ飛ばした。
あー、楽しい!と宙を舞うプリントを眺めていたら。
「…何してんだよ。」
教室のドアから、阿部隆也の声が聞こえてきた。
私は、ゲ、とドアの方を見る。
するとそこには、制服姿の阿部隆也がいて。
「な…部活じゃないの?!」
「今日はミーティングだけなんだよ。」
阿部隆也はそう言って、溜息をついて教室に入ってきた。
宙を舞っていたプリントは、パサリ、パサリ、と私の足元に落ちてくる。
「で、お前は何してたわけ?」
「……なんでもいいじゃん」
「へー」
阿部隆也は特に詮索をするわけでもなく、私の隣の席に座る。
まぁ、そこが阿部隆也の席だから、なんの違和感もないような気がするけど。
「…なに?」
「あ?」
「なんで座るの?」
私がそう言うと、阿部隆也は自分の周りに落ちていたプリントを拾い集めて私の席に置いた。
私がキョトン、と阿部隆也を眺めると、早く終わらせろよ、ソレ。とプリントを指差して言う。
「お前、一応女だし。もう外も暗いし。送ってやるよ。」
「え、いいよ、悪いし!」
「…送られとけ。」
「んー…」
強く言う阿部隆也に、断るのも面倒になって。
私は曖昧に返事をして、席に座った。
プリントを順番に並べて、黙々と問題を解いてく。
この範囲の公式はもう覚えたからまぁなんとかなるだろう。
1人でやってるときと何も変わらないはずなのに。
1人でいたときよりもシャープペンはスラスラと動く。
結局私は30分でそのプリントたちを終わらせる事が出来た。
「んー…6時半てやっぱり暗いんだ!」
「そりゃあまだ4月だしな。」
カバンを振りながら歩く私の隣を、阿部隆也は無表情で歩いていた。
学校から歩いて10分のところにある私の家。
阿部隆也は自転車を引きながら私の隣を黙々と歩く。
「阿部隆也…アンタ意外といい奴?」
「は?なんで。」
「だって、送ってくれるし!」
「…友達なら当たり前だろ。」
「え、友達なの?!」
まさかそんな認識されてるとは思ってなかったよ!と笑いながらいう私を、阿部隆也は睨んできた。
な、なに?と聞くと、別に、と答えられる。
「…じゃあ、キミは今日から隆也だ!」
「は?俺元々隆也って名前だけど」
「違う!今日から私はアンタのことを隆也って呼ぶの!」
「なんで」
「友達なら、フルネーム呼びって変でしょ?」
「苗字。」
「だって、自分の事呼んでるみたいでやだし!」
私がケタケタと笑って言うと、阿部隆也…じゃない、隆也は溜息をついた。
「じゃあ、お前はな。」
「おうともよ!」
私は笑って頷いた。
私らたぶん、いい友達になれるね!
一歩前へ!
(隆也が友達…なんか笑える!)