Glorious Days
(黒髪・たれ目・同じ苗字。ムカつく友達。)
…軽くショック感じてたりする。
だって、明日までの宿題(提出期限守らないとかなり怒る英語のハゲリンが出したやつ)をやろうとしたら…
なんで、ノートが無いの?!
ノートにプリント挟んであるから別のノートにやることさえ出来ないって…なにそれ冗談?!
と、いうわけで。
「もっしもーし。隆也くんですかーやっほーちゃんでーす!」
隆也に電話。
学校に忘れて来たに決まってるんだ。
学校にとりに行くしかないだろう!
明日の朝にやろうって言ったって、プリント5枚も1限目の授業の前にやるのは無理に決まってる!
夜の11時だけどそんなの気にしないね!
無駄にハイテンションで通話マークになった電話に話し掛ける。
『……』
「あっれ、隆也ー?オーイ、た・か・やくーん?」
『……ブチンッ』
…切れた。
プープープーと聞こえてくる携帯を睨みつけて、私はハァ?!と声をあげる。
切りやがった…切りやがったよ隆也のやつ!
私はもちろん腹が立ってリダイアル。
プルルルル、と呼び出し中の音が数十秒聞こえる。
『…もしもし』
「もしもし!隆也?!なに何で切るの!ひどいし!」
『あぁ、あれお前だったのかよ。』
「なにそれ!ちゃんですって言ったでしょ?」
『たちの悪い悪戯だと思った。』
電話越しに聞こえてくる隆也の声が笑ったようだった。
『…で、こんな時間に何。』
「あ、そうそう!隆也、今から付き合ってよ!」
『…は?』
「英語のノート学校にわすれちゃって!学校1人じゃ怖くて行けないんだよねー。」
『……あぁ。』
「駄目かなー。」
『ていうか、なんでこんな時間に気付くんだよ。…いいけど。』
隆也はしぶしぶOKしてくれた。
「…なんで夜の学校ってこんな怖いの?」
校門の前でボソリと呟いた。
隆也はまだみたいで、私は校門の前に座る。
あたりから聞こえるかえるの声に、少々苛々しつつ隆也を待った。
ザリッ
足跡が聞こえて私は後ろを振り返る。
するとすぐにそれが隆也のものではないと、気付く。
「あの…どちらさま?」
恐る恐るたずねてみれば、わたしのうしろの人はニヤァと笑った。
き、気持ち悪い!
「あのぅ…本当にどちらさまで?」
「きみ、かわいいね」
「はい?」
「ぼくねぇ、かわいいこさがしてたの。きみはさいこうにかわいいからねぇ」
いやいやいや意味がわからないですよ!
気持ち悪いヒゲの男(中年親父だ!)が猫なで声で話し掛けてきた。
とりあえず逃げたい…のに。
「ヒッ!」
腕をつかまれた。
逃げれませんが、何か!
ていうかむしろ両腕つかまれて固定?!
ちょっと待って!厭だ!嘘、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!
「やッ…ちょっと!」
「ねぇぼくのおよめさんにならない?」
「意味がわかりません!」
「あれぇぼくなにかまちがえたかなぁ」
「根本から間違えてる!ていうかみゅしろ存在が間違えてる」
か…噛んだ!
だけどそんな事を気にしてる場合でもない。
とりあえず抜け出さなくちゃ、この状況から!
ていうか隆也まだかよ!
そ、そうだ、隆也!
「隆也ー!!!!」
「あれぼくはたかやなんていうなまえじゃないよ?」
「誰がお前なんかの名前呼ぶか…!隆也ー早く来いーそして助けろー!!!!」
わぁわぁ騒いで足をバタバタと揺らす。
だけど男の腕にこめられた力は強く、私にはどうすることも出来ない。
「あばれないでもいいんだよぉ、べつにきみがいやがることはしないからね?」
「してるじゃん!いーやー!隆也ー!」
「そんなのよんでもだれもこな…ぐふぁ!」
「…へ?」
いきなり男の気持ち悪い猫なで声が消えて、そのかわり鈍い声が聞こえた。
男の手が腕から離れて、私は周りを見渡す。
「あ…隆也。」
「なにやってんだよ!」
「え?」
男を抑えながら私に怒鳴った隆也。
私はなにがなんだかわからずに目を丸くする。
だけどそのうち、あ、助かったんだぁってなんとなくわかってきて。
「…隆也ァ…怖かったよぅ……」
泣いた。
とりあえず警察に電話して、警察の人が気持ち悪い男を連行していった。
私はノートのことなんてすっかりわすれて隆也の洋服の裾を掴んだまま泣きべそをかく。
「うっ…うぅぅ…」
夜の田んぼ道に私の泣きべその声だけが響いてた。
別に、そこまで怖かったわけじゃない。
ただ、気持ち悪かったんだと思う
だけど、隆也の顔を見たら安心して、安心して、安心して。
「泣くなよ…頼むから。」
「だってぇ…ッ」
「まぁ…泣くなって方が無理だと思うけど…」
「うううぅ…」
「ていうか、俺のせいだよな…」
「ひっ…なんで?」
「俺が家まで迎えに行ってたらこんなことにはなんなかっただろ?」
隆也はそう言って、ごめんな、って謝ってきた。
隆也のせいじゃないのに、そう思ったら、なんだかこっちこそごめんなさいって思えてきて。
「隆也ぁぁぁー」
くそう、思いっきり泣いてしまった。
たぶんこの世のものとは思えない泣き顔なんだろうと、自分でも思う。
ずびずび鼻水をすすって、隆也の洋服の裾を掴んだまま歩いていたらマンションの前に着いた。
「今日…は、ありがっとぉ…!」
嗚咽交じりでそう言ったら、隆也が笑った。
何で笑うの?!と少しムカッときて眉を寄せたら、隆也の手が私の頭の上に置かれる。
「本当に、ごめんな。」
グシャグシャと頭を撫でられた。
私はその手の暖かさに安心をして目を瞑る。
隆也は、じゃ、とすぐに去っていったけど、私の胸のどっかに、何かが残ってた。
23時の密会
(あ、ノート忘れた・・・)