Glorious Days
(黒髪・たれ目・同じ苗字。友達、じゃ、ない。)






「じゃーん!」


私は学校へ来るなりアイコに右腕をズビシと見せつけた。
右の手首につけられた、隆也からのプレゼント。
なんだか嬉しくて、今日も学校につけてきたのだ。


「ハイハイ、いつも見せてもらってるから、もういいでしょ?」
「えへへ、やっぱり可愛いよね、コレ。」
「なーんか、阿部君からのプレゼントだけ喜んでない?ちょっとフクザツ。」
「そ、そんなこと無いよ?!アイコと花井くんからのプレゼントだっていっつも使ってるよ!」


私がそう言うと、ハイハイ、とアイコはわたしの頭を軽く撫でた。
私はそんなアイコに、子ども扱いしてるでしょ?と呟いた。










「あのッ、阿部、隆也くんッ、います、か?!」


手が汚くなったから、洗いに教室を出ようとしたら、知らない女の子にそう聞かれた。
私は目を丸くして、その女の子を見る。


「え、隆也に用事?」
「えっと、用事って、いうか…あの、そのぅ…」
「まぁいいや。隆也いるよ、呼んであげるね。」
「は、ハイ!」


隆也ー!と大きな声で隆也を呼べば、隆也はめんどくさそうに私を見た。
そしてガタンと椅子から腰をあげて私の隣にやってきた。


「何、。俺今弁当食ってんだけど。」
「え、この子が隆也呼んでたの。」


私はそう言って、私の目の前に立っている女の子を指差した。
その瞬間隆也はめんどくさそうに眉間に皺を寄せる。
あれ、もしかして会いたくない子だったのかな、なんて思って私は首を傾げた。


「あ、じゃあ私はこれでー」


元々、トイレに向かおうとしてたんだ、と思い出して私は2人にそう言ってトイレへ向かった。
黒板を消した時に汚れた手を洗って、すぐに教室へと戻る。
すると、廊下にはまだ隆也と女の子がいて。


「俺、そういうの、興味ないから。」
「あの、だけど…諦めれなくてッ」
「は?」
「付き合ってほしいんです、あの、最初は好きじゃなくても、後から、好きになるってことも、あるし…」
「……はっきり言って、迷惑なんだけど。」


隆也はものすごく不機嫌そうな顔で女の子にそう言った。
私はその空気が居たたまれなくて、教室に逃げるように入る。
おかしい、だって、言われてるの私じゃないのに、すごく、辛い。
それでも、なんとなく、聞いてみたくて、思わずドアの前で座り込んだ。


「別に、俺、あんたの事知らないし。それに、好きなやつならもういるから。」


隆也の声が、聞こえてきた。
はっきりと、鮮明に。
その言葉を聞いた瞬間、私は何か重たいものを背中に乗せられた気持ちになった。
好きなやつ…いるんだ。
頭の中で何度もその言葉がめぐる。


不意に見てしまった、ブレスレッド。


こんなの、私じゃなくて、好きなやつにあげればいいのに。
私はブレスレッドを腕からとって、握り締めた。


ガラッとドアが開いて、隆也が教室に戻ってきた。
ドアの前に座り込んでた私に、すこしビックリしてる。
私は隆也を見上げ、そして見つめた。
隆也も見つめ返してきたけど、すぐに私は耐えられなくなって立ち上がる。
隆也の右手を掴んで、その手のひらにブレスレッドを握らせた。


「これ、返す。こういうのは、『好きなやつ』って人に渡すべきだよ!」
「は?…聞いてたのかよ。」
「聞こえちゃったの!じゃあ!」
「え、ちょ、おい!」


耐えられなくなって、走り出す。
何やってるんだろう、私。
何でこんなにモヤモヤしてるんだろう、と考えながらも走る。
行き着いたのは、保健室だった。


ガラガラッとドアを開けて、急いでその中に入った。
中にいた保健医が、目を丸くして私を見る。

「どうしたの?」
「あ…、すみません、その、一時間だけ、休ませてもらえませんか。」
「いいけど…、泣いてるわ。」
「え…?」


保健医の言葉に、私は目を丸くした。
泣いてる?、と思わず自分の頬を触る。
確かに、濡れていた。


「あの、ベッド借りてもいいですか?」
「どうぞ?紅茶でも入れましょうか?」
「いいです。あの、少しの間だけ、何か聞こえてきても気にしないでください。」
「わかったわ。じゃあ、クラスだけ教えてもらえるかしら?貧血で休んでると先生に言っておくわ。」
「1-7です。」


私はそう答えて、ベッドにもぐりこんだ。
なんで、なんで、泣いてるんだろう、と涙をぬぐえば、何もない右腕が見える。
そうだ、ブレスレッド、返しちゃった。
なんで、返しちゃったんだろう。
…隆也に好きな人がいるって聞いた瞬間、何がなんだかわからなくなって…。


あぁ、そうか。






私、隆也のこと、好きなんだ。







そう思った瞬間、ドバッと涙腺が決壊したように、涙が流れた。















最低の恋の始まり
(失恋した瞬間、恋だと知った)