Glorious Days
(黒髪・たれ目・同じ苗字。私の付き合ってる人。)






「い…嫌よそんなの!」


そう叫んだのは、アイコだった。
いつもからは想像もつかないぐらい取り乱したアイコに、私を含めここにいるみんなが驚いてた。
私とアイコはこのあいだ買った浴衣を着て、部活から帰った野球部のみんなと合流して学校の近くの神社の夏祭りにやって来たのだ。


「なんで、なんで肝試しなんか…!」


心なしか震えているアイコの声を、私は無言で聞き続ける。
すると、田島君が能天気に、別にいいじゃんーと笑って言った。


「絶対楽しいって!俺、中学の時聞いたんだけど、この神社の裏山にある祠、本当に出るらしいぜ!」
「で、出るって何が…っ」


田島君の言葉に、アイコは恐る恐る聞き返す。
すると、田島君は笑顔で言いのけた。


「お化け!」
「…絶対に嫌ぁッ」


アイコは泣きそうだった。
そんなアイコに私は思わず吹き出し、花井くんは苦笑した。

それが、今から20分ぐらい前の話。



そして、現在。


「すごい雰囲気あるね、ココ。」
「別に、普通じゃね?」


私と隆也は裏山の祠を目指しテクテクと歩いてる。
手には小さな懐中電灯を一つ(これは田島君が用意してくれたものだ)、それ以外の光は月明かりしかない、山の夜道。
全然怖くないといえば嘘になるけど、そこまで怖いわけじゃない。
私は前をスタスタと歩いていく隆也に置いてかれないように頑張って歩いた。


「でも、アイコがこういう心霊系が駄目なんて、おもしろいね。」
「あぁ、あれは確かにビックリした。」


歩数を増やして隆也の横に並んで言えば、隆也は思い出したかのように少しだけ笑みを浮かべた。
…自分から出した話題だったけど、ほかの人のことを思い出して笑ってる隆也を見るっていうのは、あんまり楽しくない。
…って、何言ってるんだ、私!と心の中の呟きを消すように首を左右に振れば、隆也が怪訝そうに私を見た。


「なに。」


聞いているにしては疑問符のニュアンスを感じられないその言葉に、私は、え?、と小さく声をあげる。


「別に、なんでもないよ。」
「じゃあなんで首振ってるわけ?」
「え…えーっと………それは…」


他の人の話題で笑う隆也を見るのが嫌だった、なんて言いたくなんかなくて口ごもる。
すると、隆也は不機嫌そうに立ち止まり私と向きあった。
これは、何も言わないままではいれない…と判断して私は、あのね、と言い出した。


「こ、こわいなぁ、と思って。」
「は?」
「だ、だから、暗くて怖いから隆也とはぐれたらどうしよう…って、おもって…」


苦し紛れの言葉だったけど、嘘ではない。
怖くないわけじゃないし、本当に、隆也とはぐれたらどうしよう、と言った後に思った。
恐る恐る隆也を見上げれば、暗闇の中に、怖い顔をした隆也がぼんやりと見える。
怒っちゃったかな?と様子をうかがっていると、隆也はいきなり私の手を掴んだ。


「え?」
「…こうすればはぐれる心配、ないだろ。」


そう言って、すぐに前を向いて再び歩き出す隆也。
うん、と頷いて私も歩き出し、一緒にまた祠を目指しだした。

繋いだ手が、少し汗ばんでいて。
私は1ヶ月前に映画に行ったときに手を繋いだ時とは比べ物にならないぐらい、ドキドキした。
































祠で折り返し、無事にみんなのところへ戻った時、私と隆也の前に祠から帰ってきていたアイコが花井くんの隣で泣いていた。
そこまで嫌いだったんだ…、心霊系。
























































繋いだ手
(また一個、ドキドキが増えた)